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【フィジカルAI|後編】日本は「ロボット大国」のはずなのに、なぜ第三極を目指すのか

HAKONIWA Lab

2026/9/17 17:50

日米中の企業の立ち位置は明確に異なる。
約5分で日本の現在地がわかります。

フィジカルAIの日米中の違いをロボット表現している。中央に日本の産業用ロボット。

「フィジカルAIって、結局どの国が強いの?」

「アメリカと中国どっちなんだろ?」多くの人は、そんなことを思うのではないでしょうか。では日本はどうでしょう。「産業用ロボットは強いはず」くらいの感覚ではないでしょうか。実は、その「強いはず」には続きがあります。日本は、産業用ロボットで世界シェア約7割を持っています。数字だけ見れば、圧勝です。ただ、その市場規模を知ると、話が変わります。

日本が圧勝しているのは、ロボット市場の中では小さい領域。

この記事では、車の運転免許に例えて、日本・アメリカ・中国の立ち位置を整理します。約5分後、読み終わるころには、フィジカルAI領域の日本の現在地と、私たちの生活の中でどのように実用されていくのかが見えてきます。

※「そもそもフィジカルAIって何?」という方は、先にこちらの記事を読むとスムーズです。

1. アメリカは頭脳、中国は量産、日本は体づくり

「画面の中で答えを出すAI」を生成AIとするなら、フィジカルAIは「現実の世界で体を動かすAI」です。

フィジカルAIの日米中の違いをロボット表現している。手前右に日本の産業用ロボット。

国

得意なところ

2026年の現在地

🇺🇸 米国

AIの頭脳と資金

基盤モデルと投資が集中

🇨🇳 中国

量産の速さと価格

台数が先行。ロボット運動会もその一環

🇯🇵 日本

体の部品をつくる技術

産業用は世界シェア約7割 [S09]

日本が強いのは、モーター、減速機、センサーといった「体の部品をつくる技術」です。アメリカがAIの中身をつくり、中国が数をつくり、日本が体をつくる。ここまでは、役割がきれいに分かれています。

ただし、どれか1つでは成立しない

面白いのは、この3つが分業では終わらないところです。政府の資料は、この領域を「AIロボティクス」と呼んでいます。AIとロボティクスを最適に統合することが重要という意味です。

賢いAIがあっても、動く体がなければ何もできません。いい体があっても、判断するAIがなければレールの上しか走れない。頭脳と体の、どちらか一方だけでは成立しない技術です。

だからこの分野は、国どうしの競争であると同時に、部品の奪い合いでもあります。アメリカや中国の人型ロボットの中にも、日本製のモーターや減速機が入っています。

余談:この勢いは展示会でも感じました。2026年に東京で開かれたNexTech Weekという展示会に足を運んだところ、中国企業の出展が目立ち、一部の企業は、かなり大きな面積のブースを構えていました。ブースの質も高く、かけている予算の大きさと日本市場を本気で取りにきている意気込みが伝わってきました。

💡 注意ポイント:3か国の役割分担は、固定ではない。 もっとも、これは各国の伝統的な強みを分かりやすく整理した見方です。実際の開発現場では、互いの領域を奪い合う競争が起きています。アメリカはロボット本体の開発にも乗り出し、中国は頭脳の側へ投資を広げている。きれいな分業が、このまま続くとはかぎりません。

ここまで見ると、日本も善戦できそうな感じがします。


2. ところが、その「7割」には続きがある

産業用ロボットとサービスロボットの市場規模の違いを表したイメージ。日本は小さい市場で大きなシェアを持っている

日本が7割を持っているのは
小さい領域の市場

まず、この「7割」はロボット分野のうち産業用ロボットに限った数字です。日本が7割を持っている産業用ロボットの世界市場は、約0.8兆円。いっぽう、日本のシェアが1割強にとどまるサービスロボットの世界市場は、約2.8兆円あります。3.5倍大きい市場のほうで、1割しか取れていない。ロボット市場を全体で見ると、日本のシェアは23.7%です。

つまり、日本が圧勝しているのは、小さい領域の市場です。

国も、同じ見方をしている

政府は2026年3月に「AIロボティクス戦略」を打ち出しました。2040年のAIロボット市場を約60兆円と見積もったうえで、米中に並ぶ「第三極」として世界シェア3割超・20兆円の獲得を目標に掲げています。官民あわせて、2040年度までに10.5兆円を投じる想定です。ロボット大国を自認している国が、あえて「第三極を目指す」と書いている。その理由が、さっきの0.8兆円と2.8兆円です。

日本は、いい車をつくれるが
走らせた経験が圧倒的に足りない

ここで、車の運転免許の例えに戻ります。日本は、世界一いい車体とエンジンをつくれます。足りていないのは、その車で一般道を走らせた経験のほうです。レールの上(工場)での実績は圧倒的なのに、レールのない場所を走った距離が短い。店舗、介護の現場、建設現場、そして家庭。それが、いまの日本の位置です。

それでも日本に目がある、と言われる理由

実は、そうとも言い切れません。理由は、競争のルールが変わりつつあるからです。これまでのAI開発は、ネット上のデータをどれだけ集められるか、計算資源をどれだけ積めるかという「規模」の勝負でした。ここはアメリカと中国が圧倒的に強い領域です。

ところがフィジカルAIでは、現場のデータを取り込みながら、AIとロボットを統合し、安全性を担保しつつ運用を改善し続ける「統合力・運用力」に重心が移りつつある。政府はそう分析しています。工場の現場データ、積み上げてきたノウハウ、品質と信頼性。そこは、日本が長く強かった場所です。


3. 私たちの生活には、いつ実用されるのか

工場や倉庫から店舗や病院、そして家庭へと、フィジカルAIが順番に広がっていく様子のイメージ

政府が、深刻な労働力不足への対策として、ロボット・AI・DXの導入による省力化・自動化を推進するのは、製造業、物流、建設・土木、建築、小売、宿泊、飲食、医療、介護、警備、農業、林業、災害対応などの18分野です。

そのうち「先行導入6分野」として名指しされたのが、製造業・物流・建設土木・建築・小売・警備業。2040年までに、国内へ1,000万台規模を入れる計画です。

政府資料が挙げる導入先の順番も、工場・物流・小売・防災・介護・家庭・廃炉となっています。

つまり、実用の順番は、およそこうなります。
工場や倉庫 → 店舗や病院 → 家庭。

私たちの生活が急に変わるのではありません。人手が足りていない場所から、順番に実用され、少しずつ変わっていきます。


4.  まとめ

  • 頭脳がアメリカ、量産が中国、体の部品づくりが日本。
    大まかに役割は分かれている。

  • 日本が7割を持つのは0.8兆円の産業用市場。
    2.8兆円のサービス市場では1割強。

  • 順番は「工場や倉庫 → 店舗や病院 → 家庭」

    人が足りていない場所から実用化が進む。


🚶 今日からできること

自分の職場で「人が足りていない作業」を、1つ書き出してみてください。それが、フィジカルAIが最初に来る場所です。

🎯 コピペOKプロンプト

自分の仕事のどこに影響が出るかを整理したい方は、これをそのままAIに貼ってみてください。

私の職種は「〇〇」です。日々の業務を、
「画面の中で完結する作業」と「物理的に体を動かす作業」に分けて一覧にしてください。
そのうえで、後者について、フィジカルAI(現実世界で動くAI)に置き換わる可能性が
高い順に並べ、その理由を1行ずつ添えてください。
断定はせず、可能性の高低として書いてください。


5. FAQ

Q. そもそもフィジカルAIって何ですか?
A. AIが現実の世界で「見て、判断して、動く」ようになったことを指します。画面の中で文章や画像をつくる生成AIに対して、物理的に体を動かすのがフィジカルAIです。詳しくは入門編の記事で解説しています。

Q. 自分の仕事にはいつごろ関係してきますか?
A. 職種によります。政府は18分野を対象に挙げ、そのうち製造業・物流・建設土木・建築・小売・警備業の6分野を「先行導入6分野」としています。人手が足りていない現場ほど早く、事務職のように画面の中で完結する仕事は、フィジカルAIよりも生成AIの影響のほうが先に来ます。

Q. 先行導入6分野に入っていない業種は、関係ないんですか?
A. 対象は18分野あり、6分野はそのうち先に着手するもの、という位置づけです。また、自社に直接入らなくても、取引先の物流や建設の現場が変われば、納期やコストを通じて影響はうけることになります。

Q. 日本は米中に勝てるんですか?
A. 勝敗の予測はできませんが、政府が掲げている目標は明確です。米中に並ぶ「第三極」として、2040年に世界シェア3割超・20兆円の獲得を目指しています。


🛠️ 次のステップ:

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📚 出典

  • 内閣官房「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ」(2026年7月21日)

  • 経済産業大臣会見(2026年6月30日)

  • 日本経済新聞/ロボスタ(AIロボティクス戦略の改訂内容)

  • 日経ビジネス(ロボット市場全体での日本のシェア)


※AIツールの環境はめまぐるしく変化しています。本コンテンツの内容は2026年8月現在を起点とした実践と考察の記録です。仕様変更により情報の齟齬が生まれる可能性がある点はご了承ください。最新情報はコンテンツにて随時アップデートいたします。

※本記事は、当社の実践・研究と複数のAIクリエイターの検証結果や動向を参考に、ノンエンジニアのビジネスパーソン・クリエイター向けに構成したものです。

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